山梨県民、あるいは山好きな者でなくとも、この山を愛する人は多い。
東から眺めると左にずらりと並んでいる3000m級の峰々からなる南アルプス主稜線が、仙水峠でぐっと標高を下げているせいで、片翼に摩利支天を従えた甲斐駒ヶ岳は、峻険なその姿とも相まって、一際独立した山としての個性と存在感を見せている。さらに近づいてみれば、その白い花崗岩の岩肌が異彩を放つ。
深田久弥は著書「日本百名山」のなかで、汽車旅行でこれほど肉薄してくる山はない、日本アルプスで最も代表的なピラミッド、最も綺麗(きれい)な頂上、十名山を選べと言われてもこの山は落とさない、などとと述べている。
本当にこの山の良さを知るなら黒戸尾根を辿るべきだろうと思いながらも、これまで北沢峠から2回ほどあるいただけでその想いは達せられずにいる。