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北アルプス 裏銀座変則縦走

1999.8.8〜12
【12日(5日目)】 晴れ・・すぐ曇り・・のち雨・・下界曇

流星を眺めながら

 明日13日は ペルセウス座流星群極大日。午前三時半、テントを開けココアを飲みながら夜空を眺める・・・
流れる・・・また・・・2連発
少なくとも夜明けは問題ない天気になるはずだ。昨日ここで行動を止めたのは大正解だった。

夜明けの稜線

 日の出前には稜線に立っていたい。暗がりのなか出発、すぐに見晴らしのいい稜線に出る。これだから山頂直下の小屋は有難い。振り返ると昨日は全然見えなかった 野口五郎岳が大きい。その向こうの槍穂高は見えないものの、いやに鋭角にそびえ立ってみえる 大天井岳がくっきり。その稜線を左に辿るとごつごつした稜線の 燕岳。そう、5月にはあそこからこちらを見ていたのだ。今回この山に登ることにしたのも、この稜線から逆に燕を眺めたいということもあったのだ。今日その目的は達成された。

 さらに左、 餓鬼岳の稜線の向こうには 浅間山。そして大きく視線を移して 進行方向やや左、まだ暗に沈んでいる雲海の上にその巨体を浮かべているのは・・・戦艦大和・・・ではなく 名峰立山

  東の空は紅に色づき、立山上空の雲もオレンジ色に染まる。梅干しのような太陽が昇ってくる・・・・

そして日の出。次々に朝の光が山々を照らし出す。水晶・・赤牛・・煌めきの朝。暗に沈んでいた風景が、太陽光の下でにわかにその本来の色を取り戻しはじめた。





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野口五郎岳


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雲上の立山


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翳りの水晶



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コマクサ


コマクサ三昧

 夜半まで降り続いていた雨で、登山道脇の高山植物には水滴が一杯。これがまた朝のさわやかさを感じさせるのに一役買ってくれる。 コマクサを見つけた。赤牛岳を背景にハイチーズ。

 しばらく行くとまた コマクサ、 またまたコマクサ、 すごいコマクサ。西側の砂礫の斜面はずぅ〜とコマクサの群落で、谷にすーっとピンクの点々が下りていく様は壮観である。三ッ岳付近を中心に登山道沿いにどのくらいだろう・・・2kmくらいは続いていただろうか。こんなに凄いコマクサの群落がある稜線だとは僕は知らなかった。 ここまであると流石に厭きてくるが、それでもこの素晴らしい景観を無視するわけにもいかず何枚か撮影。でもたぶん僕の写真ではその素晴らしさは全然伝わらないと思うからぜひ行くべしである。


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コマクサ群落 (三ッ岳―烏帽子小屋間)

今日はどこまで

 三ッ岳を過ぎると、登山道はどんどん下る。今日出発した野口五郎岳が2924m、三ッ岳が2844m、それに対して今日下山するブナ立尾根の下り口に位置する烏帽子小屋の標高は約2550mで300m程低いのだ。北アルプスの森林限界はだいたい2500mくらいだから烏帽子小屋は森林限界あたりに位置する小屋だということになる。いつしか稜線は樹林帯に突入。高瀬ダムが眼下に見える、ブナの樹が密集しているあたりがブナ立尾根なのか。ひょうたん池を過ぎテント場、そして烏帽子小屋。小屋の脇にザックが何個か置いてあるから、烏帽子を空身で往復しているパーティーがいるのだろう。

 まだ8時、時間は十分だ。 烏帽子岳まで往復してこよう。小屋前を出てすぐ数人のパーティとすれ違う、おそらく先ほど見たザックの主達だ。あとはもう一人すれ違っただけで他にはなし。ちょっと時間差登山気味なこともあってとても静かだ。

 風景はとても良い。いままで歩いてきた、いかにもアルペン的な風貌とは違う山の姿がここにはある。 樹と岩と砂との絶妙なコンビネーションはため息がでるくらい。北アルプス表銀座コースの入り口である燕岳に、もうひとつ味付けしたような感じで、ここが裏銀座コースの入り口の山になっているのがなんとなくうなずけるような気がしてくる。烏帽子の先端までよじ登って下りてくる。ここからさらに北、南沢岳までの稜線も四十八池と呼ばれる池塘と草原の別天地が広がる素晴らしいところらしい。今回は残念ながらここで引き返したが、やはりここはもう一度訪れたいところだ。

 烏帽子小屋で牛丼を食す。ザックのなかには今朝お湯で戻した「おこわ」があるのだが、ちょっとぜいたくをしてしまった。おまけにコーヒーまで注文してしまうという超贅沢。

 しかし、ここではちょっと不安がある。実は 下山した高瀬ダムからJRの大町駅まではタクシーという交通手段しか無い。もちろんかなりの料金になる。だから誰かと同乗したいのだが、いまのところそのターゲットが見つかっていないのだ。烏帽子泊りなら同じタイミングで下山する登山者もいたのだろうが、ちょっと時間差気味であるこの時間では難しい。

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森林限界


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ニセ烏帽子

この感じ、燕の雰囲気に似てる



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烏帽子岳


 さっき、野口五郎からここに着いたばかりのおじさん二人のパーティーに、
「下で一緒になったらタクシー途中まで一緒に乗りましょう」
とは声をかけておいたけれど
「そうですねえ」
との生返事で期待できそうもない。大町温泉郷泊りということのようで、かなりユックリしそうなのである。

 小屋〜烏帽子間を往復している人はいないことが判っているから、このおじさんパーティーをあてにしないとすると、残る手はいつ下り始めたかわからない先行パーティーに追いつくしかない。しかし下り足の遅い僕では恐らく無理であろう。 最悪一人でタクシーを覚悟して僕はブナ立尾根を下り始めた。

 下り始めるとほぼ同時に雨。でも登山道は樹林帯に入るためあめの影響はあまり受けず雨具を付けるほどでもない。登りの登山者と次々とすれ違うが、どの顔も辛そうだ。この 標高差1230mのブナ立ち尾根はアルプス三大急登とも言われる厳しいコースなのだ。その中を平然とかなりのペースで登る男。荷物は普通の小屋泊り程度のものだがなんと 足下はビーチサンダル ・・・なんなのだこの男。今度は上からもうスピードで降りてくる マラソン登山の男・・・みんな元気だなぁ。

 「ブナ立」というくらいだし、稜線から見下ろしたときに緑が随分と奇麗にみえたので、ブナ林が素晴らしい登山道かと思っていたけれどそれほどでもない。針葉樹林帯を抜けるとブナの樹がちょぼちょぼ、そして意外なほどあっけなく高瀬ダムの縁に下り着いてしまった。雨は上がっている。ここからしばらくは砂漠歩き、サンサンと照りつける太陽の下だったらさぞかし暑かろうが、今日のような天気なら問題ない。しばらく歩いてトンネルを抜けるとダムに出た。

 結局、稜線からここまで3時間、マラソン登山者には論外として、まあ遅くはないタイムで下ったけれど、結局だれも抜くことが出来ず、しかも、後から登山者が来る可能性は極少 (実際には、1パーティー居たんだけれど彼らは扇沢行き)で、最悪なケースになってしまった。

 ダムサイトに公衆電話があってそれでタクシーを呼べるということだけれど、タクシーはすでに1台停車中。すぐに2台やって来たから扇沢行きの登山者もそれに乗れてGO。僕のほうの運転手は
「あとの登山者を待ちますか」
と言ってくれたけど、当分来ないことがわかっていたから、そのまま行ってもらうことにした。

 そこで運転手さんから聞いた交通情報。
七倉ー高瀬ダム間は同時に10台までのタクシー(指定2社)が入ることが出来る東京電力との取り決めがある。しかし13:30〜14:30ころにかけて、そのタクシー会社2社の観光バスが相次いで七倉に到着するため、その客をダムまでピストン輸送するのにタクシーはフル稼働となってしまい、登山者は待ちぼうけを食いやすい。だからここへの下山は13:30までにするか、そうでなければもっと遅いほうが待たずに済むということだそうだ。

 ダムまでの道は2車線の物凄くよい道なんだから観光バスも入ってもよいことにすればなにも問題ないのに・・・と運転手氏。それに東京電力の社員はレジャー目的でもこの高瀬ダムはもちろん、なんと竹村新道の登山口である湯俣温泉までマイカー使って乗り入れられるらしい。

 隣の関電(黒四ダム)のやり方に比べて、東電のやり方は誠に排他的で地元に観光資源を還元するという考え方が無さ過ぎると件の運転手氏はぼやく。そんな話をしながらJR大町駅まで。料金は約1000円オマケで7000円弱だった。

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