残照の槍ケ岳(本日のハイライト) 17時。天気が良ければ
樅沢岳から槍穂の夕照を狙おうと思っていた。上空を見上げるかぎり雲は多い。でも双六池のあるこの稜線の鞍部からは槍も穂高も姿が見えないから確実なところはわからない。わからないときは行ってみなくては。僕は
三脚と撮影機材一式をもって樅沢に向かった。先行するカメラマンらしき姿が二人。樅沢岳をほんの少し行き過ぎた高みの先端に3人は三脚をセット。ぼくの右にはジッツォの上に乗ったペンタ645、本格的である。
太陽の光はまだ昼光色で槍穂を眩しく照らしている。まだまだ夕焼けには早い。もちろんこの状態でも何枚か撮りはしたが本番はもちろんこれからだ。気になるのは太陽が沈む西・・・ちょうど双六岳のむこうあたりは雲が重なっていることである。このまま陽が沈めば、赤い光が槍にとどく前にその雲で遮られてしまうことが十分考えられる。
やきもきする待ち時間。6時・・・寒い。気温は標高が100m上がると0.6℃下るという。ここ樅沢岳の山頂は2754m。0.6×27.5で16.5℃。海抜0m地点より16.5℃温度が低くておまけに風が強い。体感温度はさらに下がる。行動中や太陽が照りつけている昼間は暑いくらいだけれど、日が暮れてきたときに、こうやってじっと待っているときは、とても寒い。僕はフリースの長袖を着ているのだけれどそれでも寒いくらいである。
6時半、
いよいよ槍穂が・・・
真紅に焼け・・・
あ・・・
あらっ
・・・消えた。
しょ・・・照明さ〜ん、光お願い・・・お願い・・・
懸念していたことが現実になったのだ。太陽は雲に隠れ、光は途切れた・・・うすら黄色い東の空の色をほんの少しだけ映して・・
なんとなく色が付いたようにもみえる槍穂・・・
震えながら待った一時間半・・・
あれは一体なんだったのか・・・。
がっくりとして・・・でも、悔しくて1枚・・・2枚とシャッターを切ってみる。
ふーっとため息をついた僕が、
「今日は駄目ですね」
そう隣のペンタックス氏に声をかけようとしたその瞬間であった、
ジャーン、ジャジャジャーン、
ジャジャジャーン、
ジャーン、
ジャーン、
ジャーン
な・・・なんと
メラメラと真っ赤に燃えた槍穂が目の前に出現したのだ・・・
復活した光芒。
地平線と雲の僅かな隙間から
照射される太陽光・・・
残照・・・
まさにそのもの。
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まだ昼光色に近い光が、正面から槍を照らす
手前は西鎌尾根の稜線、
槍の左側に伸びるのが北鎌尾根。
光が途切れ、暗に沈む槍ケ岳。
これで終わってしまうのか・・・
今までの「待ち」はなんだったのか。
僕と同じように夕照を狙う
何人かのカメラマンの顔には
みな同じような落胆の色が・・・。
再び光が射す。
帰りかけようとした夕照見物の登山者が
あわてて引き返してきた。
そして光はさらに赤みを増し、
岩峰を赤く染めた。
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