大滝山から見た蝶ケ岳と槍ヶ岳
北アルプス

蝶ケ岳と大滝山(1)

2002.8.25-26

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 ここのところ忙しさにかまけて、山からも写真からもすっかり遠ざかってしまっていた。こうなるともう体力的な不安が大きく「今年の夏は山は止めよう」と思っていたのだが、いざ休みが始まってしまうと登りたい気持ちを抑えることなどとてもできず。結局いそいそと荷物を作って信州へ車を走らせてしまっていた。

 今回登ったのは、穂高展望の定番「蝶ケ岳」と、その横に静かに控える「大滝山」である。思えば数年前、暫く遠ざかっていた山に復帰したのもこの蝶ケ岳からであった。北ア入門の山は、復帰へのリハビリの山でもある。

 昨夏に唐松〜白馬を歩いて以来オーバーナイトの山行はしてない。それどころか山歩きそのものに最近はご無沙汰なのである。写真もほとんど撮っていない状態だ。しばらく歩いていないと山に行くのがおっくうになってくる。もちろん気持ちだけではない。歳を重ねるごとに体力面の不安も大きくなり、どの程度の荷が背負え、どの程度歩けるのかということが気にかかってくる。テントはあきらめ小屋にするか・・。

 針ノ木岳から船久保―烏帽子といったところを歩きたいと思っていたのだが、ぐずぐずしているうちにいつしか夏休みも押し迫ってきてしまった。いつものようなテント泊なら土日にかかってもさほど影響はないが、シーズン真っ盛りの週末に小屋泊まりはしたくない。「布団一枚に何人」という世界に宿泊料金を払おうという気にはならないからだ。

 一泊にしよう、でもまだ訪れたことのない山へ。そうして選んだ山は大滝山。といってもマイナー過ぎてご存知ない方も多いであろう。大滝山は蝶ケ岳の南に位置し、蝶ケ岳からは稜線をおよそ一時間半歩けば到達できる。さらにそのまま稜線を南下すると、徳本峠に至る。出来れば周遊コース、上高地―徳沢―蝶ケ岳―大滝山―徳本峠―上高地といきたかったところだが、これだと二泊、しかも沢渡の駐車料金二泊分と沢渡ー上高地の往復バス代がかかってしまう。したがって貧乏ヒマなしのアタクシとしては、ここは三俣からのピストンでやむなしとする。

 3時半に自宅を出発し6時半に登山口「三俣」に到着。舗装されたきれいな駐車場。車の入りは三分程度で空いている。学校はすでに夏休みとはいえ、まだ7月、平日は流石に車が停められないほど混雑することはないようだ。

 7時に出発。林道の終点・・・ようするに登山道に起点で入山届を出す。計画には一応「大滝山泊、まり」と書いておいた。

 さて本日のいでたちは。容量およそ80Lのザック・・・これは、いわゆるテント泊縦走用であるからして、小屋泊まりの今回はかなりアマル。あまりアマルとフタが閉まらなくなって極めて調子が悪い。自炊道具を詰め込み、カメラザック(ウエストにつけるタイプだが)を中に入れるなどして膨らませ、ようやくザックの形となった。日帰り用に使っているカメラザックのほうが良かったかも・・・

 カメラは35mmがEOS3とレンズが3本(70-200mmF4L、24-80mm、タムロンSP90mm)、中判がプラウベルマキナ67だ。EOS3は山岳使用は初めて、マキナは昨年夏から一年ぶりの登板となる。三脚はベルボンカルマーニュ630。カルマーニュにしてから三脚の重さでヒーヒークタバってしまうということはまずなくなった。ありがたいことである。

 で、本日の新兵器。防水型のカメラバック FOXFIRE「0−A308カメラパックM」である。.もともとは釣屋用に開発されたもののようだが、その防水性は山屋にも都合が良い。私は霧でも雨でもカメラは首に下げるか、あるいはウエストバックに収納した形で、すぐ撮影体制に移れる状態で歩く。ようするに破損・水濡れはある程度は覚悟ということなのだが、カメラさんにしてみれば結構辛い状況である。このバックで少しでもカメラに優しくできればと思ったのである。歳を取ると人間優しくなるのです。

 ところがである。このバックには首から下げるストラップの他、背中にまわしてバックを胸に固定するベルトがついているのだが、装着した途端、そのベルトがバックからスポンと抜けてしまったのである。抜けた部分を見ても糸のほつれや生地の破れは無い(右写真)。おそらく縫製不良なのであろう、トホホ・・・。機能にはそれほど影響はないので、今回は致し方なしというところで一応使ってみることにする。

 このバックについては、帰宅してからメーカーに状況をメールし現物を送付して新品に交換してもらった。右上の写真のものは、その新品。

 

FOXFIRE「0−A308カメラパックM」
交換してもらったものなのでまだタグがついてます。

数年前にこの道を歩いたときは、霧の中で幻想的だった。晴天の今日はまた違った趣である。

 登山道に入ってすぐ常念への道を分ける。蝶ー常念と巡って三俣に戻ってくる周遊コースもここからの定番コースだ。さて、蝶ケ岳への登り、樹林帯、九十九折りを登ったり、少し平たんになったりという道。整備状態は十分で歩きやすい。しかし久しぶりの山歩きであり、体調も十分でないことはわかっているので、ここは意識的に速度を押さえてゆく。45分歩いて15分休み。その繰り返しだ。2時間ほど歩いたところに道標があった。もうずいぶん来たんじゃないかいと思っていたのだがまだ半分も来ていない・・・ちょっとウゲゲ・・。

 10時、ちょうど具合の良い平地を見つけ昼食Timeとする。パスタを食い、コーヒーを飲み、昼寝をし・・・であっという間に一時間(^^;;

 地図を見ると、もう小屋までたいした距離ではないのだが、俄然斜度がきつくなってくるので侮れない。時間はまだそれなりにかかるのである。樹林のすき間から小屋が見えると少し安心するのか、なぜかどっと疲れがでてくる。実はもうこの辺で・・・「今日は蝶泊まりだね(^^;;」って気になっていた。

 森林限界を抜けると御花畑。ここは春に蝶の雪形になるところだそうだ。大滝山への分岐を示す道標。迷わず蝶ケ岳ヒュッテへの道を選ぶあたくし。
 

 13時、ロケーションの良いテント場を抜けると蝶ケ岳ヒュッテ。泊まりだよってお客はまだ10人もいないようだ。たとえ2時間昼寝をしてから歩き始めても大滝山荘までは十分いけるのだが、いったん「泊まっちゃお」と思った気持ちはなかなか覆らない。明日行けるところは今日行かない。そうね「泊まっちゃお」。
 
 大滝山へ向けて出発する登山者の姿を、引け目を感じながら目で追ったりして・・・。いやいや今日は天気悪いし。明日大滝山まで往復してから下ったって時間的には十分なのさ、と必死に自分の行為を正当化して心の平静を保とうと努力するあたくしなのであった。

 午前中の青空はどこへやら。穂高の稜線には雲がまとわりつきすっきりとしない展望。もはや小屋に入ってごろごろするしかない。

お花畑の隅にある大滝山への分岐を示す道標
(26日に撮影したもの)

槍が見えたり隠れたり・・の図
ピーカンの山は誰でも撮れる。だからこういうのも悪くない。

 一泊二食付9000円。これを高いと思うか、まあ適当だと思うかは人それぞれだろう。自分としては小屋が空いていて、布団一枚に一人が寝ることができて、そこそこ快適ならば払っても良い金額かなと感じてはいる。ただし、払っても良いと思うのと、実際に払えるかというのはまた別問題であって、今回のような一泊ならまだしも、これが三泊、四泊だったら支払い不能に陥ることは間違いない。長旅はテントに限るのである。

 小屋の中の登山客はほとんど中高年。もはやあたくしも街では立派な中高年なのだが、今日の山小屋の中ではバリバリの若手である。燕から縦走してきた人、これから槍へ向かう人、なかには三俣から入って、大天井―槍と巡り、槍沢を下って横尾から蝶に登り返して、明日三俣に下るという御夫婦も。中高年といえども皆元気。負けちゃアいられないねと思う。

 霞ながらも少し見えていた穂高が雲の中に沈んだ。山全体が重苦しい灰色に包まれている。このまま暮れるのか、夕暮れどきに再び穂高が姿を現すのか・・・どちらにしても仕事は飯の後である。

 

夕方近くになって再び青空が戻ってきた。けれども蝶槍の後ろのこの雲は暮れるまでとれず、その向こうにあるはずの常念岳はついにその姿を現さなかった。

この丘が瞑想の丘、中央奥が蝶ケ岳山頂。

涸沢岳の前の雲が色づく。
雲に翻弄されながら夕方の撮影はフィニッシュ。

 5時に夕食。最近の山小屋の食事というものは凄くなったよね。なんせあーた、鰻であらせられますよ。昔なら考えられなかった幸せ。テントでは味わえない美味しさ。テント泊で小屋飯というのがもしかしたら最高かもなぁと思う今日この頃。ただ、夕食はともかく朝食は朝の撮影タイムとカブルんですよねぇ・・・それが残念。

 食後、少し回復基調の天候に期待し、穂高と対峙・・・というほどたいしたもんではないが・。

 周辺を見回したところ、まともな写真家は私(がまともかどうかは別にして)以外は、一人。その御仁は。ハスキーにバケペン2・・ザックはラムダの大型と、いささか定番で決まりすぎなのが難点ではあったが、風貌からしても本物っぽい写真家であった(上の写真で一番手前にしゃがんでいる人)。

 中途半端な夕暮れを味わったあと小屋へ。あとはもう寝るしかない。山の生活はワタクシにとっては普段の寝不足解消の場であったりもするのだ。