安倍奥 山伏

2001.9.8

   

 山伏は「やんぶし」と発音する。

静岡県安倍川流域の「安倍奥」と呼ばれる山域に属する山で、

静岡、山梨の県界、見方によっては南アルプスの端という言い方も出来る場所にある。

 

山伏山頂の草原越しに望む富士山

 

 台風が接近していて怪しい雲行きであるが、こういう日こそ好条件が期待できる。「間違いなく今朝は東の空が焼ける」と判断したが、はて、どこへ行こうかというのが問題である。朝焼けだから富士山の西側にいなければいけないのは当然だが、富士山と太陽の配置をどうするか、どこまで離れるか。どの高さまで登るかが問題になってくる。また山麓では霧がかかって全く富士が見えないということもある。
 
 あれこれ迷ったが結局山伏に決めた。

 山伏は「やんぶし」と発音する。静岡県安倍川流域の「安倍奥」と呼ばれる山域に属する山で、静岡、山梨の県界、見方によっては南アルプスの端という言い方も出来る場所にある。

 山頂付近には草原が広がっており、そこは静岡市唯一のヤナギランの群生地でもある。また、富士山写真家にとっては富士山の好撮影地としても有名で、笹原の中に立つ枯木がよいアクセントになっている。山頂へのアクセスは、静岡市側から山梨県は早川町側からそれぞれ長い林道を上っていく必要があるものの、車は山頂直下の峠まで入るので歩行距離は僅か、峠から山頂まで15分足らずだ。

 週末なら峠には何台かの車が置かれ、山頂に富士山カメラマンの姿が見えるのが普通なのだが、今日はなぜか僕以外の車はない。天候といい、、太陽の位置といい、悪い条件では無いはずなのに不思議だ。こんなこともあるのだなぁ・・・とりあえず「むふふ」ということにしておく。

 シノゴ一式、マキナ67、そして35mmはEOS一式を背負って山頂へ向かう。三脚は2本。距離は短いが結構な急登だ。昼間歩くときは、その途中でも樹や花を見ながら撮りながら歩くためか、辛さや時間の長さを感じたことは無かったのだが、夜の登山道はいやに長くキツク感じる。うーむこんなにあったっけと思い始めたころ、ようやく山頂の一角にひょっこり飛び出した。

 やっぱ誰もいないわ。


 富士山は見えているが、頭上はピーカン。焼けはするがスケールは小さそう。まっ、こんな気持ちの良いところで朝を独り占めできるのだから、それだけでも良しとせねばなるまい。

 富士山の上空にある雲が焼けてきた。ただここからだとあまりにも遠く迫力が無い。

 あとで知ったのだが、このとき田貫湖では大焼けだったそうだ。自宅の近所で見事な朝焼けが撮れたかと思うと時間をかけてここまで来たのがちと空しい気もするのだが、気にしないことにしておく。

200mmまでのレンズしか持っていなかったので、
本当はココまでアップでは、撮れていない。
トリミングでようやくこの大きさだ。


ナカナカに良い位置からの日の出

 シノゴ、67、35mmとカメラとレンズを取っ換え引っ換えの撮影。なにせ他に人がいないのでどこに動いても問題がない。人が入ってしまうことを気にすることもなければ、逆に人のフレームに入らないように気を使うことも無い。登山道の真ん中に機材を広げっぱなしにしても誰に迷惑をかけるわけでもない。しかし思い直してみれば、こういう撮影が昔は普通であったはずで、ぞろぞろ並んで写真を撮っている昨今のほうがむしろ異常であるといえよう。

 やがて富士山の背後が黄金色に染まるころ、太陽が山頂の右から顔を出した。気がつけば頭上には秋らしい雲も広がっている。そして眩しい光が山伏の山頂に満ちあふれる頃、富士は霧の彼方にかすもうとしていた

9月の声を聞いて一気に涼しくなった。
浮かぶ雲もすっかり秋の風情である。
  

山伏の森の中はサラシナショウマの大群落。
和名は晒菜升麻で、晒菜は若葉を茹でて
水でさらして食べることからきているそうだ・